ズームができないレンズなんて不便以外の何物でもない!
と思った人も少なからずいるはず。確かにズームレンズを使いなれた人は単焦点レンズは不便なレンズになるかもしれません。
じゃあなぜズームできない不便なレンズ“単焦点レンズ”が存在するのでしょうか?
水泳でたとえてみましょう。
ズームレンズは幅広い焦点距離をカバーするので水泳の選手でたとえるとしたら、自由形や平泳ぎなど多種多様に泳げるメドレーの選手。
対して単焦点レンズは1つの種目に特化した自由形の選手。
ではメドレーの選手と自由形専門の選手が自由形(クロール)で競争するとどちらが速く泳ぐと思いますか?
もちろん自由形専門の選手の方が速く泳ぎますよね。
単焦点レンズは「その焦点距離に特化したレンズ」なので、明るさや解像度なのすべてにおいてズームレンズを上回る描写性能の持つレンズなのです。
逆の言い方をしますとズームレンズはズームができる以外のメリットはありません。
ということで単焦点レンズの特徴を解説していきます。
単焦点レンズの特徴
単焦点レンズは開放絞り値が小さい
開放の絞り値が小さいとその分、絞りを開けることができます。
露出モードの解説でもお話ししましたが、絞りを開けることで被写界深度が浅くなり一眼レフならではの背景をぼかした写真を撮ることができます。
こちらのズームレンズの型番を見てみましょう。
Nikon 標準ズームレンズ AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR ニコンDXフォーマット専用
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR
赤い文字“f/3.5-5.6G”の部分がレンズの開放絞り値となり広角端ではF3.5望遠端でF5.6絞りを開くことができます。
それでは単焦点レンズの型番を見てみると・・・
Nikon 単焦点レンズ AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G ニコンDXフォーマット専用
AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
開放絞り値がF1.8も開けることができます。ズームレンズに比べてとても明るいレンズということがわかりますね。
開放絞り値が小さいので単焦点レンズはズームレンズよりボカした写真が撮れるということです。
単焦点レンズは“絞れる余裕”がある
ズームレンズと単焦点レンズの2本が同じ絞り値F3.5を設定した場合、ズームレンズは開放F3.5に対して単焦点レンズは数段絞った状態でのF3.5になります。
レンズというものは絞りが開放では100%性能を発揮することができません。数段絞ることで描写が低下するレンズの周辺部(外側)をカットするので、開放絞り値が小さい単焦点レンズの方が有利です。
レンズは絞って使った方が描写が向上する
単焦点レンズは小型で軽量
これも単焦点レンズの強みです。
ズームレンズは高倍率(カバーする焦点距離が広い)になればなるほど複雑な構造になってしまうので、レンズ本体が大きく重くなってしまします。
単焦点レンズはレンズの枚数が少ないので小さく軽く作ることができます。
単焦点レンズは比較的安価
高額な望遠単焦点レンズは例外ですが、標準域の単焦点レンズなんかは比較的安価でズームレンズを凌ぐ描写性能がありコストパフォーマンスが優れています。
単焦点レンズはレンズの枚数も少なく構造も単純なので安価に製造ができるからなんですね。
単焦点レンズにせまる描写を誇ると言われるこのズームレンズ
俗に言う「大三元レンズ」の1つですが非常にお値段が高いです。大卒初任給をゆうに超えます。
描写とズームの便利さを兼ね備えるのって技術的にすっごく難しいことなんですよね。単焦点レンズは一つの焦点距離に専念すればいいので設計も比較的簡単ので製造コストを抑えられるということです。
好きな焦点距離を買おう オススメ単焦点レンズ
キットレンズになれた頃、自分にあった好きな画角ができると思います。その中でも僕は比較的使いやすい標準域の単焦点レンズの購入をオススメします。
標準域の焦点距離というのは世間一般ではフルサイズ換算で50mmと言われています。
50mmという画角はイメージセンサーの大きさによって異なるのでAPS-Cサイズとフルサイズでの標準単焦点レンズを紹介します。
DXフォーマット(APS-Cサイズ)
焦点距離に1.5をかけて50mm付近になるレンズが標準レンズとなります。
DXフォーマットでは焦点距離が35mmちょうど使いやすい標準の焦点距離と設定されています。
DXフォーマットに最適化された専用レンズもありますが、将来フルサイズ移行も視野に入れておきたいのでここはあえてFXフォーマットカメラでも使えるレンズを買っておいても良いかもしれません。
35mmレンズをDXフォーマットで使用すると換算52.5mm相当となります。
この52.5mm相当の画角が狭いと感じるなら少し短い28mmという選択肢もあります。
FXフォーマット(フルサイズ)
使っているカメラがFXフォーマット(フルサイズ)なら焦点距離50mmのレンズがそのまま標準的な画角となります。
この50mm単焦点レンズは最短撮影距離が0.45mとあんまり寄れないので、マイクロレンズという選択肢もあります。
まとめ
何も考えずズームしていたのが単焦点レンズを使ってみると、その焦点に縛られるのでこうやって撮らないとおさまらないとか、大変だけどその画角に対してしっかり向き合って撮影することになります。
焦点距離ってそれぞれちゃんと役目があって、広角はパースを効かせて前後の距離感を出すときに有効だし。望遠は圧縮効果。ちゃんと使い分けないとダメなんです。
何でもかんでもズームで被写体を引き寄せちゃうとどれも単調な写真になりがち。
ズームレンズに慣れてしまうと少し離れた被写体もズームで寄ろうと楽しちゃうんですよね。どうしても近寄れない被写体ならズームで寄るしかないですが、近づける被写体なら足を使って寄って撮影することも大切です。
「足ズーム」ってやつです。
自分の写真にメリハリをつけるに単焦点レンズを使ってみましょう。